歴史
総合芸能として誕生
人形浄瑠璃は、物語の進行と登場人物の台詞を語る「浄瑠璃節」と、語りの伴奏となる「三味線」、そして物語の進行に合わせて操られる「人形」の三者が一体となった芸能です。この三者はそれぞれに独自の歴史を持って発展してきましたが、文禄・慶長年間(1592〜1614)に京都において提携し、「人形浄瑠璃」という新しい総合芸能として誕生しました。
その後、貞享元年(1684)、竹本義太夫が大坂・道頓堀に竹本座を開き、元禄十六年(1703)に近松門左衛門の『曽根崎心中』が上演されました。この興行の大成功をきっかけに、浄瑠璃は江戸時代に隆盛を極めたのです。
 
蜂須賀家による人形座の保護
江戸時代、阿波と淡路島を領有する蜂須賀家は淡路島の人形座を保護しました。淡路には約40の人形座がありましたが、その中でも元祖的な上村源之丞座に対して、経済的援助、藩主による人形芝居鑑賞と褒美、特権的な祝儀芝居興行の許可などを与えています。
 
近世阿波での興行
阿波における人形芝居の興行状況を「芝居根元記」(兵庫県史近世資料)が伝えています。それによると、元禄六年(1693)4月13日から5月8日までの間に14日の興行が行われたとあります。期間が計25日間なのは雨天順延のためです。出演は上村源之丞座、会場は東富田操り場とあります。淡路島の人形座による興行数は、江戸中期については不明ですが、幕末には多い年で一年に4、5回行われていたようです。
 
農村での興行
徳島城下では浄瑠璃などの芸能が毎年のように興行されていましたが、農村では娯楽的な行事を行う場合、もっともらしい理由が必要でした。郡奉行に開催を求めた願書(ねがいしょ)には「八幡神社の御開帳をしたいと思います。ついては、客寄せもあり、川田村の浄瑠璃人形遣い源太夫の一座を呼んで、晴天日ばかり15日間の興行をいたしたい。お情けをもって、この件を許可していただければ、この上ない幸せでございます」という主旨の内容が書かれています。この他さまざまな記録によると、城下や藍作地帯の吉野川流域は、旧暦2・3月、8・9月の農作業の少ない時期を目指して淡路の人形座がやって来て、約半月間にわたって興行を行いました。那賀・海部および美馬・三好の各郡では、春秋の祭りの時期に、自村の愛好者や隣村の芸達者によって浄瑠璃や人形芝居が演じられたようです。
藩政時代の興行の記録
藩政時代の興行の記録
(徳島県立文書館展示図録)
 
阿波の人形座
淡路島の人形座は諸国を巡業するいわば生活のかかったプロ集団でした。阿波の人形座は村共同体の人形座と個人主宰の営業目的人形座の2つに分かれます。村共同体の人形座の場合、村人から信用されている人が中心となり村単位で結成されます。メンバーは村人、演じるのも村内が中心。盆正月、春秋の村祭り、田植えや稲刈り後の慰労会として農村舞台や境内などで行われました。入場料は無料ですが、村のおもだった人々はお金を花代としてお包みにして出し、それは直ちに「御花だれそれ」と書いて張り出されました。人形座の費用は、人形座に属する人々の無料奉仕、花代、寄付金などによってまかなわれていました。営業目的の人形座についての記録はほとんど残っていません。
 
藩政下での阿波お踊りと浄瑠璃
徳島藩は阿波踊りに対して、興奮の末に藩士と町民が衝突し、それをきっかけに藩行政への不満が爆発することを恐れていました。このため阿波踊り期間中は藩士の町中への外出を禁止しています。また町民が藩士の屋敷に呼ばれて踊ることも禁止でした。それに対して浄瑠璃は阿波踊りのように昂揚することがないため禁止されませんでした。また忠義や孝行を扱った外題(げだい)が多く歓迎されました。
 
阿波で人形浄瑠璃が最も盛んだったのは明治10年(1877)から約10年余り。 勝浦・那賀・海部地区では神社境内の農村舞台で村の人形座が無料で演じていました。
 
興行数が次第に減少。娯楽が浪曲(浪花節(なにわぶし))や映画・ラジオなどに移行。
 
昭和21年(1946)阿波人形浄瑠璃振興会の結成、人形浄瑠璃の復興に尽力。 阿波人形浄瑠璃芝居フェステイバル(平成9年〜)が毎年開催されるなど、ファンの拡大や後継者の育成も行われています。 平成11年、阿波人形浄瑠璃は国指定重要無形民俗文化財の認定を受けました。
藩政時代の興行の記録
昭和23年の公演の様子
 
参考文献/(財)阿波人形浄瑠璃振興会設立50周年記念誌「国指定重要無形民俗文化財・阿波人形浄瑠璃」
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